研究論文

Research Publication

MOG抗体関連疾患(中枢神経系自己免疫疾患)の初めての全国疫学調査の結果が明らかとなりました。

2023.03.14

著者名
(中村正史)、栗山長門ら
発表日
2023.03.10
論文タイトル
Epidemiological and clinical characteristics of myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease in a nationwide survey
研究の概要
ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(MOG)抗体関連疾患は、従来は多発性硬化症(MS)や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、あるいは視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)と診断されていた中枢神経脱髄疾患患者の一部で、血清あるいは髄液中にMOG抗体が見出されたことを契機に近年急速に研究が進展し、新たな中枢神経系自己免疫疾患として疾患概念が確立されつつあります。しかし、これまでわが国では全国的な疫学調査は行われておらず、患者数や検査所見、治療やその有効性などの詳細は不明でした。
研究グループは、千葉大学、慶應義塾大学との共同研究によりMOG抗体関連疾患の全国疫学調査を行い、患者数、粗有病率、粗罹患率を推計し、発症病型、血液検査やMRI検査などの検査所見、治療内容とその有効性、予後を集計・解析しました。わが国におけるMOG抗体関連疾患の患者数は1695人(男性764人、女性931人)、粗有病率は人口10万人あたり1.34人(男性1.24人、女性1.44人)、粗罹患率は人口10万人あたり0.39人と推計されました。初発時は、視神経炎が発症年齢に関係なく30-40%を占める一方、若年発症ではADEM、成人発症では脳炎、脳幹脳炎、脊髄炎の割合が多いことが判明しました。また、ステロイドや免疫グロブリン、血液浄化療法による治療への反応は、どの発症年齢層でも良好であることが判明しました。
これらの結果は、欧米からの報告と一致し、MOG抗体関連疾患は全世界において人種や地域による差異のない一様な疾患であることが示唆されました。
PMID
36905136
掲載誌
Multiple Sclerosis Journal