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研究論文
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研究論文
高血圧の人が大腸がんになりやすい背景に未知の因子?–静岡県民60万人のデータが示す可能性
著者名
水野仁美、中谷英仁、尾瀬功、藤井亮輔、栗山長門、久松隆史、池崎裕昭、西田裕一郎、岡田理恵子、小栁友理子、道端伸明、田ノ上史郎、中川弘子、瀬藤和也、栗木清典、三浦克之、渡邊謙吾、中杤昌弘、桃沢幸秀、松永貴史、松尾恵太郎、木下和生
発表日
2026-07-28
論文タイトル
High Incidence of Colorectal Cancer in Japanese Individuals with Hypertension (高血圧の日本人は大腸癌を発症しやすい)
研究の概要
■ 発表のポイント
• 静岡県内の医療データベース(静岡国保データベース:SKDB)を用いた約60万人規模の解析により、高血圧の人は大腸がんになりやすい傾向があることを明らかにしました。高血圧と大腸がんの双方に影響する因子(年齢・喫煙・飲酒・肥満など)の影響を取り除いても同じ結果でした。
• 降圧薬を使用してない人では、高血圧の人の発生リスク(※ハザード比)が正常血圧の人に比べて1.15倍高い結果でした。
• 降圧薬を使用している人では、高血圧の人(治療効果が不十分)の発生リスクが正常血圧の人(治療効果が十分)に比べて1.16倍高い結果でした。
• 高血圧になりやすさを示す遺伝的な特徴と大腸がんの発症との間には、明らかな関係は認められませんでした。
• この結果は、高血圧と大腸がんの間に、現時点では説明ができない関連があることを示しています。今後は、高血圧と大腸がんを結びつける仕組みを明らかにすることが期待され、その仕組みの理解は両者の予防に役立つと考えられます。
■ 詳細な説明
― 研究の背景と経緯
高血圧の人が大腸がんになりやすいことは以前から知られており、喫煙・飲酒・肥満・運動不足などの生活習慣が双方の発症を促進することで説明できると考えられています。一方、これらの影響を取り除いても、両者の間に関連があるのかははっきりしていませんでした。そこで私たちは、日本人を対象とした2つの大規模な研究データを用いて、この関係を詳しく調べました。

― 研究結果(明らかになったこと)
静岡県の国民健康保険データ(SKDB)を用い、約60万人を対象に平均4年以上追跡しました。年齢や肥満・喫煙・飲酒・糖尿病・運動不足など、大腸がんに影響するさまざまな要因をできるだけ公平になるよう調整して比較しました。さらに、「高血圧になりやすい体質」が大腸がんの発症にも関係しているかを調べるため、別の日本人集団 1.5 万人(J-MICC 研究)を対象に遺伝子情報を解析しました。
降圧薬を使用していない人では、高血圧の人は血圧が正常な人よりも大腸がんを発症する割合が1.15倍高いことが分かりました。この傾向は男性でより明確に認められました。一方、降圧薬を服用している人では、高血圧の人は血圧が正常な人よりも大腸がんを発症する割合が1.16倍高いことが分かりました。女性で同様の傾向がよりはっきりと認められました。高血圧になりやすさを示す遺伝的な特徴と大腸がんの発症との間には、明らかな関係は認められませんでした。

― 結論と今後の展開
この結果は、高血圧と大腸がんの間に、現時点では説明ができない関連があることを示しています。食生活や運動習慣など、両方の病気に共通して影響する生活環境を含めた未知の環境要因が関係している可能性があります。高血圧自体が大腸がんの原因となる可能性は今回の遺伝子解析からは肯定も否定もできませんでした。今後は、高血圧と大腸がんを結びつける仕組みを明らかにすることが期待され、その仕組みの理解は両者の予防に役立つと考えられます。

■ 謝辞
本研究は、静岡社会健康医学大学院大学が静岡県から委託を受けて実施している委託研究事業(承認番号:SGUPH_2021_001_071)の支援を受けて行われました。データの提供や研究にご協力いただいた関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

<用語解説>
※ハザード比:比較するグループ間で、ある出来事(今回の場合は大腸がんの発生)が起こるリスクの比率のことです。イベントの発生だけでなく,そのイベントがどの時点で生じたかという時系列の情報も加味し、1より大きいほど、その出来事が発生するリスクが高いことを示します。
PMID
42521804 link-share
URL
https://www.nature.com/articles/s41440-026-02748-9
掲載誌
Hypertension Research
Graphical abstract
高血圧の人が大腸がんになりやすい背景に未知の因子?
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